2016年7月28日木曜日

[ロイター東京 28日]コラム:9月米利上げの可能性は消えたか=鈴木敏之氏

[ロイター東京 28日] -
米連邦公開市場委員会(FOMC)は27日、金融政策の据え置きを決定した。今回は、経済見通し発表と議長会見がない会合であり、米連邦準備理事会(FRB)が発信する情報はFOMC声明のみだ。

その声明から透けて見えるのは、利上げ再開に積極的なタカ派と消極的なハト派の熾烈な対立、そして両者のバランスを取るという難しいかじ取りを迫られたイエレンFRB議長の姿だ。以下、声明の内容から利上げ再開の可能性を考えてみよう。

<利上げ再開に二の足を踏む訳>

まず、FOMC声明は、経済情勢の判断を示すところから始まっている。前回6月声明では「上向いた(have picked up)」だったが、今回は「緩やかな速度で拡大している(has been expanding at a moderate rate)」に判断が引き上げられた。中でも、家計支出(消費)については、「力強く(strongly)伸びた」とした。「力強く」という表現が用いられることは珍しい。

一方で、設備投資は「軟調のままだった(has been soft)」とした。設備投資の軟調は、労働生産性の伸び率の低迷にも通じるため、前回FOMCでスポットライトが当たった懸案だ。

また、雇用に関する記述も錯綜している。6月は「力強かった」と言いながら、5月が「弱かった」ことにも触れている。要するに、次の7月雇用統計(8月5日公表)を見ないと判断できないということだろう。こうした強弱混交の表現から、FOMCメンバー間で米景気議論が収束していないことが見て取れる。

ただ、声明では、供給の余剰(スラック)は昨今、小さくなっているとの認識が示された。具体的には、「総じて、就業者数やその他の雇用市場の指標はここ数カ月間、労働力の活用がいくらか進んだことを示している」とした部分だ。おそらく、そうした認識を示さないと、FOMCの経済見通しの根幹(金融緩和で雇用増加、スラック縮小、インフレ率上昇の主張)が成り立たないからだろう。

0 件のコメント:

コメントを投稿